尼崎市長意見書に対する抗議声明
西宮市に「平和・無防備条例」を実現する会
(1) 尼崎市長は、直接請求署名の重みをまず受けとめよ
7月11日、尼崎市議会において、「尼崎市を非戦の街に」市民平和条例制定の請求に対し、市長が反対意見を添えて議会に提案したことを知りました。法定数の2倍近い直接請求署名15632筆を添えて提出された条例案に対して、市長はその内容を真摯に吟味することなく、国の主張をうのみにしてあっさり切り捨てています。これは、明らかに平和を願う市民に対する暴挙であり、許すことはできません。署名活動で集められた市民の声や願いを聞く姿勢を持たないばかりか、条例案の趣旨や内容にほとんど触れず、請求に込められた市民の平和への願いや、市民の生命・財産を守る市政への期待を大きく裏切るものです。
西宮市でも、3年前に「平和・無防備条例」の直接請求を行いましたが、市長による意見書では「市民の平和と安全を確保することは本市の最も重要な責務であります。私は、今回の直接請求に際しての国際平和を願う多くの市民の方々の熱意を、重く受けとめていかなければならないと考えております」と述べられました。また、同意見書からは、条例案文を吟味した跡が伺え、決して十分とはいえないまでも、請求の趣旨は汲み取っていただけたと感じられるものでした。しかし、今回の尼崎市長意見書にいたってはそのような形跡がなく、あまりにも市民を愚弄する態度であると感じます。尼崎市長は、市民軽視の姿勢を改め、今一度条例案を読み直すことから本請求に向き合ってほしいと考えます。
(2) 国の言いなりでは市民は守れない
市長は、まず「無防備地域」の考え方について意見を述べるといいながら、第1追加議定書第59条の無防備地域を宣するための4要件を引き合いに出し、これらは「すべて平常時にあっても尼崎市の権限に属するものではありません」「隣接する都市や尼崎市内で戦争が行われている状況下ではなおのこと、尼崎市としての権限は及ばない」と断じています。また、宣言を行う主体について、赤十字国際委員会コンメンタールと国の「見解」との矛盾点を認識しながら、その矛盾点を国に質すことをせず、法的根拠のない「見解」の方に追従するという、およそありえない結論に至っているのです。
ところが一方で「国民保護法第35条」に基づき「国民の保護に関する計画」については粛々と進める報告を平成19年3月議会において行っています。つまり、一方で国防は国の専管事項であると言いながら、その一翼を担う「計画」は着々と進めるというおかしな行動をしています。国の専管事項であれば、市が計画を策定する必要はないはずです。国が保護計画を立て、避難誘導その他の指示一切を行えば理論上は事足りるからです。しかし国はそのようなことは緊急に際してできないから、現場においては地方自治体の責任と権限で対処せよ、というのが「国民保護法」の趣旨だと解釈することもできます。西宮市の国民保護計画では「自衛隊による誘導は要請しないことがある」と明記し、軍民分離の努力を行う余地をつくっています。
さらに、「武力攻撃が切迫しているかどうかの情報を市長が国に先んじて得ることは考えられず」と断じていることは、「阪神・淡路大震災」を経験している自治体の長とは思えない意見です。あの時も尼崎市は国からの情報と指示で動いていたというのでしょうか。国の緊急事態を想定した被害については、全面戦争よりも、突然のミサイル攻撃やテロ攻撃のほうをより重要視していたことはご存じないのでしょうか。
国がジュネーブ追加議定書を批准した背景は、非常事態法や国民保護法などとのバランスをとるためですが、国際人道法としての追加議定書の理解をもっと深める必要があります。文民保護のための方策は平時から取られるべきもので、これは国の専管事項ではありません。国はこの内容について国民に広く知らせる責務を負っています。地方行政も同様です。条約は批准したけれども国の解釈では実効性はありませんという説明で国際社会が納得するとは思われません。
(3) 市民の声を聞き、方針の転換を
尼崎市長は、署名に込められた市民の意見を真摯に聞き、議会運営においても方針の転換を図るべきものと考えます。条例案および関連法案についての理解を深めるための公聴会や学習・意見陳述などを通して真に市民の平和と生命を守るためには、「武器を持たない平和」の道しかないことを、日本国憲法起草の精神に立ち戻って考えていただきたいと思います。市議会においては、議員の皆様が本条例案について、心から真摯な議論を尽くされることを切に望むものです。
以上
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